FC2ブログ






プロフィール

tetujin282828

Author:tetujin282828
このブログは、tetujin's blog(Broach)の倉庫です。
本体はココ→ http://pub.ne.jp/tetujin/
小説関係だけをまとめて置いてあります。
倉庫だけに、コメントへのレスなしをお許しください。
(本体に遊びに来ていただければ嬉しいです)



最近の記事



最近のコメント



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カテゴリー



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



ブログ内検索



RSSフィード



リンク

このブログをリンクに追加する



スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


単線
闇に包まれた線路に横たわり、冷たいレールに耳を当ててみる。
遠くから、大地の鼓動が聞こえてきそうな初夏の夜。山奥の単線。

線路に耳を当てて、列車の近づく音を聞くなんて、子供のころ以来だ。小学校からの帰り道の踏み切り。その頃は単線だった。通り過ぎたら、しばらくは列車が通らないことを知っていた。クラスの男の子たちは、よく線路の上に釘を並べてぺっしゃんこにして遊んでいた。
私は女の子だったから、また、親に「線路で遊ぶな」と釘を刺されていたから、そんなことはしなかったのだが・・・・・・。
ある日、学校からの帰り道に男の子に「弱虫」と言われて、親との約束を破って、レールに耳を当てるため線路に立ち入ったことがあった。幼いながらも、女の意地だったのかもしれない。
で、 誰かが石でレールを ” ガンッ! ”  と。
幼稚ないたずらに頭にきて、大声で男の子たちとけんかしていたら、踏み切りの管理人の男の人に捕まってしまった。男の人から校長先生に言いつけると脅された。
大変なことになったなと思ったら、とっさに嘘が口をついて出てきた。
「妹が病気で、早く家に帰らなければいけないいんです ゚(ノω・、)゚グスン」
それで、まんまと放免してもらえた。翌日、男の子たちは、先生にこっぴどく叱られていた。
今では複線だったり、高架だったりしするので、危ないからってその線路には近寄れなくなっているのだが・・・・・・。
当時から、私は口先でかわして人生を過ごしてきたのかもしれない。そんな報いが、今、来ているのだろう。

「もう、めんどくさいから、死んじゃってもいいんだよね・・・・・・」
朝から、ずっと思っていた。いつものように、中央線に乗って会社に行こうとしてホームに立ったとき、駅のチャイムに引き込まれるように電車に飛び込みそうになって、どうにか思いとどまった。そのまま、会社をずるやすみして、反対方向の電車に乗り込み、あとは、駅に到着する列車に連れられて、ローカル列車を乗り継いで、ここまで来てしまった。
今日、一日中、考え続けたのだが、それでも、自殺を思いとどまることはできなかった。今死ねば、家族や会社の人たちは、私の気持ちを充分にわかってくれるだろう。それには、今しかない。そして、山奥の駅までやってきてしまった私は、闇の中を線路伝いにしばらく歩き、両側を林に囲まれてまっすぐに伸びたこの場所にたどり着いた。こうして、線路に身を横たえていれば、高速で走る列車に轢かれて簡単に死ぬことができるだろう。

かなりの時間、そうしていた。そして、ついに、列車が近づく音が響いてきた。
私は目を閉じて、その瞬間を待つ。大きな振動が周りを包み、列車は、確実にレールの上を通過していった。

なんて死というものはあっけないものなのだろう。死は、私に幾許の痛みさえも与えなかったし、なにももたらさなかった。
私は線路から立ち上がり、自分の姿を見た。死というものはこういうものなのだろう。「生」から、切れ目なしに連続して移行する。「生」と「死」は一体のものだったのだ。おそらく、臨死の際に脳にもたらされた脳内モルヒネの作用による幻覚。今、こうしている時間は、実は列車にはねられるほんの一秒以下の時間でのことなのかもしれない。
私は立ち上がり、とっくに通り過ぎた列車を追って、駅の方向に向かって歩き出した。死後の感覚も、生前とまったく同じ。レールの上をバランスを取って歩いているものの、ときどきバランスを崩して落っこちる・・・・・・。

駅に着いて、駅員に話しかけられて・・・・・・。
私は、とっくの昔にその駅から先の線路が廃線になっていたことを知った。でも、たしかに線路の上を列車は走っていった。中には信じられないくらいの人が乗っていた。こんな山奥のどこにみんなは帰っていくのだろうと疑問がわくぐらいに。
私は、駅の外へでた。いや、よろけるようにくずおれながら、出ていった。

「なんでだろう?」
口に出してようやく自分が、さっきまでとかわらず今、ここにいることが実感できた。
「なんで廃線になった線路を列車が通っていたのだろう?」
私は、それを、「もう一度やり直してみろ」と神様が演出したことのように思えてならなかった。
でも、あの駅にもどって事実を確かめるのは嫌だった。数メートルあとの駅が、今の私の目には恐怖の対象として映っていた。近寄りたくない・・・・・・。というのも、駅の存在は、私の臨死の際の幻覚が作り出した実体のないものなのかもしれない。
いや、それ以上に、実は私の存在が、売れない文章屋が電脳空間に作り出した、架空のものであるのかもしれない。
・・・・・・そして、駅にもどれば、その事実を突きつけられそうな気がして。



スポンサーサイト

テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学


この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。