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ショートケーキの記憶
ショートケーキの記憶をたどっていたら、ふと、数年前に江ノ電の鎌倉駅のそばにあるケーキ屋で、ずぶぬれになりながら食べたことをふと思い出しました。記憶ってヤツは突然よみがえるもんなんすね。

その日は朝から曇り空。前日に組み上げたフォールディングバイク(折りたたみ自転車)のシェークダウンのため、ぼくはJR北鎌倉駅にいた。北鎌倉の駅をスタートして大仏ハイキングコースを抜けて由比ガ浜へ。しばらくは海岸沿いをサイクリングするつもりだった。午前10時出発。大仏ハイキングコースは、最初から階段が延々と続く。急な段差が多く40~50cmのドロップオフが頻繁にある。しばらくは自転車をたたんで携行。乗車率は50%程度。大仏坂切り通しを下っている時に、雨がポツリポツリと降り出してきた。
海の広がる南以外、三方を山で囲まれた鎌倉には、外との往来のための「切通し」と呼ばれる山を切り崩して作った通路が7ヶ所ある。化粧坂(けわいざか)、亀ヶ谷坂、巨福呂坂(こぶくろざか)、朝比奈、名越、極楽寺坂、そしてこの大仏坂だ。
大仏ハイキングコースの最後は階段下り。
鎌倉の山側の景色を一望できる長谷配水池広場から、延々と下りの階段が続いていた。霧雨は一向に降り止まず、階段をぬらしていた。レインウェアを着ていないぼくは、ずぶ濡れだった。だが、雨よけにかぶっていたベースボールキャップのバイザーのおかげで、雨が直接目に入ることだけはまぬがれていた。

大仏コースを下りてくると大仏の目の前にでる。この大仏前の通りは人も車も大渋滞で走れたもんじゃない。信号で渋滞している車をぬって、坂道をブレーキをかけながらダッシュで駆け抜ける。そして、渋滞をさけて信号のある交差点を左折し、人力車が走る細い路地に入ろうとした時だった。

急に空から黒いものが降ってきて、走っている自転車の前輪のそぐそばに落ちた。

落ちてきたのはリスだった。
リスを轢かないように、とっさにハンドルを切って、フルブレーキをかけていた。リスはあっけに取られて、こっちを見ていた。そのリスのすぐ横を、前後のタイヤを完全にロックさせて、つんのめるような形で後輪が宙に浮き、自転車ごと前転しながら体を投げ出されているぼくがいた。ハンドルに胸をイヤと言うほどぶつけて、コンクリートの地面に顔から激突。瞬間に手をついたものの、急に投げ出された勢いを止めることはできなかった。
道を歩いていた観光客の人たちが、自転車を抱え起こしてくれた。リスはと目をやると、脇の木をよじ登って、さっさと安全な場所へ逃げていったようだ。
起き上がって、体を確かめる。特に怪我はないようだが、顔をすりむいていた。目の脇をすりむいて、雨に濡れて血がにじんでいた。心配してくれる行きずりの観光客たちに大丈夫と合図して、ぼくは自転車にまたがった。
大仏ハイキングコースのダートを走り抜け、おまけに大仏前の路地でころんだため、ぼくはずぶぬれの上に泥だらけの格好だった。ハイキングコースということで、たいしたことはないだろうとヘルメットもかぶらずに、コースを甘く見ていた結果だった。こんな雨の日は、走らないほうがいい。

海に出る予定を変更して、御成り通りを抜けて鎌倉駅に向かう。ずぶぬれの上に、いいかげんお腹もすいていた。泥んこの格好のまま、入れそうなコンビニを探していたのだが、あいにく凝った古い店が軒を並べる通りには見つからない。江ノ電の鎌倉駅に近付いて、緑の窓枠が印象的なそのケーキ屋があった。
店の前に自転車を停め、店の自動ドアからレジにいる女主人に声をかけた。
「ショートケーキください」
昼飯がわりのケーキ。
店の入り口のから入ったすぐそばには、イスとテーブルが置かれていて、店内でお茶も飲めるようだ。だが、こんな泥だらけのかっこうでは、店の中に入るのは申し訳ない。
ぼくが店の中に入ろうとしないので、けげんな顔つきの女主人に、「こんな格好だから・・・・・・」と言い訳をしたら、にっこりと笑ってくれた。
店の入り口でケーキを受け取り、お金を払う。そして、店の軒下を借りて、ケーキを食べようとした時だった。
店の中から、白いパティシエンヌのかっこうした若い女性が、こっちをじっと見ていた。
<店の軒先で迷惑なんだろうな・・・・・・>
自転車でこけた事といい、なにかと、暗い気持ちになる。いたたまれなくなって、その場から逃げ出そうとした。

食べかけのケーキを箱にしまい、どこかケーキを食べられそうな場所を探そうと自転車を押していきかけた時だった。
店の中から、さっきのパティシエンヌが出てきた。自転車を押そうとしているぼくに、後ろから傘をさし掛けてくれている。だが、何も話しかけてこない。このまま行こうか、どうしたものかと、迷ったのだが、結局、振り向いて彼女の顔を見た。たぶん、ぼくはこの時、殺伐とした目をしていたのかもしれない。
「あの、良かったら、店の中で召し上がりません?」
「でも、こんな格好だから」
と言い、とりあえず鎌倉の駅まで行こうと思ったら、待って(# ゜Д゜)ゴルァ!!と彼女に言われた。
なんだなんだと思いつつ、足を止める。

「怪我してるじゃないですか。それに風邪引いちゃいますよ」
「・・・・・・」
結局、ぼくは折れて、店の中でケーキを食べることにした。店の右側の大きな緑の窓枠の場所には、いくつかのテーブルとイスが置いてあって、そこでも、お茶が飲めるようになっていた。
恐る恐る、イスに座ると、先ほどの女主人が、コーヒーを持ってきてくれた。そして、真っ白なタオルと。
泥だらけのぼくは、そのタオルをどうやって使っていいのか、わからずに、とりあえず、比較的、綺麗な手を拭いてタオルを返すと、受け取ったタオルで、怪我した目の上を拭いてくれた。タオルには血がにじんでいた。先ほどのパティシエンヌが、バンドエイドを何枚か持って来てくれた。そして、すりむいた目の脇に貼ってくれた。
雨で凍えていたぼくは、暖かな店の中で一息つくことができた。そして、その時のショートケーキは、甘酸っぱく、切ない味がした。

鎌倉駅について自転車をバッグにしまうとホッとした。そして、さっきのケーキ屋の人たちに御礼もそこそこに出てきてしまったことに、物凄い後悔を覚えた。しかし、ヘタレなぼくは、何もせずにそのまま電車に。
御成り通り。観光客を魅了するだけの華やかな店はなく、どちらかと言うと、地元の人が利用するような小さな店が多い。時代から取り残されたようなひなびた感じの通り。あの甘酸っぱく、切ないショートケーキのことがあって、鎌倉へ行くといつもこの通りに立ち寄る。
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テーマ:ほとんどノンフィクションストーリー - ジャンル:小説・文学


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